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- 呼気一酸化窒素濃度測定器「NObreath」
喘息の診断と治療に有用な呼気一酸化窒素濃度測定器「NObreath」を導入しました
気管支喘息(以下喘息)は気道(気管支内腔)が狭くなる病気ですが、気道が狭くなる原因の主体は気道のアレルギー性炎症(気道炎症)であり、気管支平滑筋の収縮ではありません。炎症を起こした気管支粘膜の表面は赤く腫れあがっていて(発赤,腫脹)、そのために気道は狭くなり、咳、痰、喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼー)、呼吸困難などの症状を起こします。したがって、喘息は気道炎症を抑える吸入ステロイド薬で治療します。
メプチンエアー®やサルタノール®などの発作止めと言われる吸入薬は抗炎症作用はなく、気管支拡張作用は一時的で弱く、使用過多により喘息の悪化や不整脈や心臓の副作用が現れます。喘息死の予防のために発作止めの吸入薬は1年に1本以内の使用にとどめたほうが良いと言われています。
喘息の気道炎症の程度は呼気一酸化窒素濃度(FeNO; fractional exhaled nitric oxide)を測定して評価します。NObreath(写真)というポータブル器械を用いてFeNOを測定しますが、12秒間息をはくだけで測定できます。リスクがなく非侵襲的で小児~高齢者まですべての年齢で測定可能です。FeNO測定の検査費用は3割負担で720円です。
アレルギー性炎症(気道炎症)があればFeNOは上昇します。
FeNO値が20 ppb以下は気道炎症なく正常、35 ppb以上は気道炎症の存在を示し喘息の可能性ありと診断されます。喘息の治療中は3~6か月毎にFeNOを測定しますが、20 ppb以下を維持できるように吸入ステロイド薬の用量を調節します。
通常行われる呼吸機能検査は気道狭窄の有無を調べますが、FeNO測定は気道炎症の有無を検査します。2つの検査は目的が違いますので両方とも喘息の診断と治療には必要な検査です。FeNO測定で気道炎症がなく、呼吸機能検査で気道狭窄がなく、かつ夜間睡眠が良好で運動時に咳や息切れなどの症状がなければ喘息のコントロールは良好と判定されます。
FeNOは喘息の病態の本体である気道炎症の重要な指標であり、FeNO測定は気管支喘息の診断と治療にとても有用です。
喘息治療でとても重要な抗炎症薬である吸入ステロイド薬は喘息症状悪化に対する予防薬です。症状が改善したからといって勝手に中止すると喘息症状が再発しますので、快適な日常生活を維持するために吸入ステロイド薬の継続が重要です。
(文責 呼吸器内科 下田 照文)